2017年のバレエ映画を締めくくる『ポリーナ、私を踊る』監督インタビュー

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今年公開された『ザ・ダンサー』(記事はこちら)や『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン、世界一優雅な野獣』『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』などからもわかるとおり、実は2017年はバレエ映画の当たり年! その締めくくりにイチオシなのが、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開中の『ポリーナ、私を踊る』。

作品の見どころを聞き出すべく、本作を共同監督したふたり、ヴァレリー・ミュラー氏とコンテンポラリーダンスの振付師でもあるアンジュラン・プレルジョカージュ氏にインタビューをしてきました。

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(左)ヴァレリー・ミュラー監督、(右)アンジュラン・プレルジョカージュ監督

 ©2016 Everybody on Deck -TF1 Droits Audiovisuels  -UCG Images -France 2 Cinema

STORY
バレリーナを目指すポリーナ(アナスタシア・シェフツォワ)が6歳のときに出会った厳格な師・ボジンスキー(アレクセイ・グシュコフ)に、バレエの基礎を教え込まれる。その後、才能を認められたポリーナは名門ボリショイ・バレエ団へと進むが、一方では少しずつ踊ることへの喜びを見失いつつあった。

 

カップル鑑賞にぴったりな“デュオ”がテーマ♡

サブ①s+― 作品全体をとおして展開のカギとなるのは、自分以外の人との関わりですよね。

ヴァレリー監督(以下、ヴ):

そうですね、「デュオ」というのがこの映画のひとつのテーマです。師と生徒、父と娘、母と娘、ポリーナと彼氏、振付家とダンサー、すべてが「ふたり」の関係なんですね。その中で築かれた経験こそが、ポリーナが振り付けする舞台作品に活かされているんです。

― この作品ではポリーナのダンサーとしての成長だけでなく、親の期待からの脱却とか、恋や失恋、異国の地で一人暮らしをするといった、人間的な成長も繊細に描かれていると思いました。

ヴ: 私たちが映画を撮る際に重要だと思ったことは、「登場人物を社会的な環境の中に置く」こと、そして「家族的な物語を見せる」ということですね。この作品は、ひとりの若い女性の物語ですから、彼女には社会的なバックグラウンド、家族的なバックグラウンドがあるべきだと思いました。

もうひとつは「ダンスの世界における現実」というものも描きたかったんです。世界の有名な振付家、あるいはダンスの世界で有名になる人の中には、貧しい環境から身を起こした人がたくさんいます。ダンスというのは体ひとつでできること。貧しくて何もなくても、成功して社会的に階級的に上昇することができるというのが現実としてあるんです。

アンジュラン監督(以下、ア):

「現実」といえば本作は漫画を原作にしていますが、そのスタイルはとてもエレガントなものです。もちろんそれも美しいと思います。でも漫画と映画っていうのは違うメディア、違う媒体。映画では実写の人物が現れて何がしかを演じるわけですから、ポエジーなだけでは作品にはならないと思うんです。原作の要素を映画にそのまま盛り込むことは可能なんですが……。でも現代映画っていうのは社会的な背景とか、現実、そういったものを描かないと、作品にはならないと。それは現代映画に必要な、大きな要素だと思うんです。

サブ③s+

― 「ポリーナの成長」という側面から作品を考えたとき、楽しそうにバレエを踊っていたのは子供のころだけで、年月を経るごとに周囲の評価を気にして殻に閉じこもってしまう姿が印象的でした。

ヴ: この作品は、大人になった彼女がさまざまなものから解放されるという物語です。ただ、大人になってからクリエーションに成功するためには、その前段にたくさんの学びがなければいけません。大人が何かを開放し取り去るということと、幼いころにきちんと学習できていることも、相互関係にあるんですよね。

 

両監督がこだわり抜いた「人」の存在に注目

アンジュラン監督s+― ポリーナ役のアナスタシアは、本作がデビュー作ですね。600人以上の主演ダンサーオーディションや、芸術としての映像へのこだわりなど、構想から制作まで、さまざまな苦労があったと思いますが……。

ア: 振付家である私にとっては、すべての段階にそれぞれの難しさがありました。例えば、選んだダンサーたちが踊れるように、演じられるようにシーンを考えること。同じダンスシーンでもリハーサル室の練習風景と劇場でのシーンは、それぞれどうやって映すべきか。さまざまな場面に応じた撮り方を、緻密に考えたんです。

ヴ: 子供がダンスをしている場面の撮影は難しかったですね。撮影時間が限られていましたから。あとはラストシーンになっている、舞台作品のデュオ。長回しで撮影をしましたから、そのたびにアナスタシアとジェレミーは踊らなければならなかったんです。彼らはあのシーンだけで18テイクも撮影しているんですよ!

― アンジュラン監督にとって「全幕バレエを振り付ける」ことと、「映画を振り付ける」ということはどう違いましたか?

ア: 私が常に心がけているのは、目の前にいるダンサーたちのために振り付けるという姿勢なんですね。例えば東京バレエ団の人たちに振り付けるとなったら、彼らの身体の中にある歴史や文化とは何か。そういったものを考えながら新しい作品を作ります。そこではダンサーたちの背景と、私のスタイルが混ざった作品になるんです。

一方映画の場合には、どの振り付けも「登場人物の中の誰かが振り付けた」ことになります。つまり私は、ポリーナの頭の中を想像して「ポリーナだったらどういうふうに振り付けるかな」と想像しながら振り付ける。正確に言えば、100%の私の作品ではないんです。これは実に面白い体験でしたね。

ヴァレリー監督s+

― 本作における“ミューズ”の役割を担っているのが、男性であるという部分も興味深かったです。

ヴ: カール(ジェレミー・ベランガール)のことですね。確かに普通は“ミューズ”というと女性のことで、映画においても女性が男性にインスピレーションを与えることが多いです。でもこの作品では、男性がインスピレーションを与える側になっている。普通と逆である部分は、特徴的だと思います。

「インスピレーション」の描き方には、もうひとつこだわりがあるんです。ポリーナのインスピレーション、つまりオープンな心を象徴するために「トナカイ」を象徴的に登場させました。映画をご覧になる方々には、そのあたりにも注目してもらいたいですね。

― なるほど、そういう楽しみ方も面白そう! もう一度、作品を見直してみたくなりました。今日は、ありがとうございました。


インタビューの冒頭でも触れたとおり、この作品は「男女(カップル)」が登場するのはもちろん、「バレエのデュオ」「先生と生徒」「親と子」など、多くの“ふたり組”が描かれています。バレエやダンスに詳しくなくても、カップルで楽しめるからデートにおすすめ♡ ぜひ劇場へ足を運んでみて!

『ポリーナ、私を踊る』
メインs+10月28日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国ロードショー中
配給:ポニーキャニオン

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