
満開に咲き誇るソメイヨシノ。しかしその期間は短く、わずか1、2週間足らずですから、人々は心を奪われてしまうのですね。
たとえば夏に咲く百日紅のように長く咲き続けるものであれば、だれも通りすがりに目をやる程度のものでしょう。美しさとはかなさが人を惹きつけるのですね。
さて、ご存知の通り、桜はソメイヨシノだけではありません。数々の品種があり、咲く時期も微妙にずれています。早いものは12月から、そして遅いものは4月下旬となります。そう考えるとけっこう長く楽しめる花なのですね。
今回オススメする桜の名所は、東京・文京区にあります、由緒ある寺院「護国寺」の境内。幾種もの桜があり、少しずつ時期をずらしながら咲いています。
落ち着いた雰囲気の文京区は、大人なデートにもぴったり。桜の品種のご紹介とともに護国寺をご案内してみましょう。
手水舎のすぐ横「大寒桜」
金剛力士像に守られた「神齢山」と書かれた山門を入ります。このとき門の裏側の両脇にも像があるので見てください。増長天、広目天です。優しい顔をした神様ですが、足で災いの元となる邪気を踏みつけています。
階段の脇にあります、手水舎には特徴的な水盤に水がたたえられています。「唐銅蓮葉形手洗水盤」です。由緒あるものなのですね。
その手水舎のすぐ横にありますのが、大寒桜(オオカンザクラ)です。カンザクラを観賞用に改良したもので、安行寒桜(アンギョウカンザクラ)とも呼ばれます。
大寒桜の見頃は3月下旬頃で、ソメイヨシノよりも1、2週間早く開花します。濃いピンク色で、花が散りきらないうちから葉が伸びてきます。
境内に咲き誇る「染井吉野」
境内のそこここに咲いているのが染井吉野(ソメイヨシノ)です。薄ピンク色で、桜といえばの桜ではないでしょうか。
大仏様、金剛力士様、地蔵菩薩様の銅像を飾るかのように咲いているところが見どころですね。
本堂の左右「枝垂桜」
本堂の左右には枝垂桜(シダレザクラ)があります。江戸彼岸(エドヒガン)とも呼ばれます。
垂れた枝の先の花びらが地面に付きそうになっています。特に本堂に向かって右の枝垂桜が見事です。
4月上旬から見頃「八重桜」
枝垂桜が散り始めますと、八重桜(ヤエザクラ)が満開です。その年の気候にもよりますが、八重桜は4月上旬くらいが見頃となります。
ピンク色が関山(カンザン)、白っぽいのが一葉(イチヨウ)です。
黄色や緑色の桜「御衣黄」
4月中旬には、本堂に向かって右手の枝垂桜のさらに右手に御衣黄(ギョイコウ)が咲きます。
黄色あるいは緑色の桜です。親切に説明文を掲示してくれています。
「鬱金(ウコン)と並ぶ黄桜(キザクラ)の代表である。色は一様でなく、開き切ると、紅色の縦線が混ざる。花は御衣黄のほうが鬱金より小さく、花径3.5cmほど。花弁数はふつう十数枚、多いと20枚になる。『花壇地錦抄(かだんちきんしょう)』の『浅黄(アサギ)』に一重と八重があると書かれ、八重は花弁数が多目の御衣黄にあたろうか。結実しない。」(文・ 湯浅浩史 農学博士)
『花壇地錦抄』とは、江戸時代、1695年に江戸の園芸家伊藤伊兵衛が著した園芸書です。
東京都内でお花見デートにオススメの「護国寺」をご紹介しました。護国寺では、このようにさまざまな桜を静かな雰囲気の中で楽しむことができます。
文京区は電車のアクセスが良く、一方で落ち着いた環境なので、ゆったりとデートを楽しむにはピッタリです。1697年に建てられたそのものの歴史ある本堂にお参りし、暖かな春の一日を楽しんでみてはいかがでしょうか。
【護国寺】
東京都文京区大塚5-40-1
アクセス
東京メトロ有楽町線「護国寺駅」下車すぐ