
大人になると、お礼状やご挨拶にお手紙を書く機会がありますよね。お手紙のマナーとして、季節の挨拶や季語を添えることを知っていますか?
毎月、季節によって変わる時候の挨拶について、12月の季節の挨拶と季語をご紹介します!
マナーをしっかり身に付けて、1年の締めくくりである12月に大切な人へお手紙を送ってみてはいかがでしょうか。
目次
「お手紙」の基本ルール
さて、そうはいうものの、普段「お手紙」を書いていますか?
メールやSNSが大流行の昨今ですから、ペンを取って便箋に直筆の文章を書くという機会はなかなかないかもしれません。
そして、自由に絵文字から書き始めてもいいメールなどとは違って、「お手紙」には書き方のルールがあります。かんたんにそのルールをおさらいしてみましょう。縦書きか横書きかは、どちらでもかまいません。好きなほうを選んでください。
そして、手紙の中身は大きく4つに分かれます。
①前文
頭語(よくあるのは、拝啓)からはじめて、時候の挨拶さらに相手の方の様子をおうかがいする言葉を記すところです。
②主文
相手の方にお伝えしたい用件を記します。
③末文
結びの言葉そして最後に結語(よくあるのは、敬具、女性の場合かしこ)を記します。
④後付
手紙を書いた日付、差出人であるあなたのお名前、そして受取人のお名前、宛名を記します。
縦書きの場合、日付と宛名は上段に合わせて、自分の名前は下段に合わせて記しましょう。但し、横書きにするときは、宛名は前文の前、一番上の行に書いたほうがいいですね。
時候の挨拶とは
手紙の前文において、頭語(拝啓など)に続いてしたためますのが、それが「時候の挨拶」となります。
季節に応じて風景や心情を書き表すところです。春夏秋冬のみならず、季節感あふれる各月の名前、さらに二十四節気など、古くから季節の移り変わりを細かく感じそして言葉にしてきました。
そんな日本の伝統が、手紙のマナーにも取り入れられているのですね。自分らしい感性を季節の移り変わりに乗せて言葉にすることができます。あなたのお手紙を受取った方に、まずはあなたの心をそして後に続く相手の様子をおうかがいする言葉とともに、相手への思いやりの気持ちを伝えることができるのです。主文(用件)に入る前に、お互いの心が寄り添うことができるということですね。
但し、この時候の挨拶には、手紙を書いたときが、何月かあるいは二十四節気のどこにあたるかによって形式化されているところがあります。
たとえば、真夏の暑い盛り、気温が35度あったとしても、二十四節気の一つである「立秋」を過ぎてしまうと、暦の上では秋となりますから、時候の挨拶は「残暑の候」となります。
具体的に考えてみましょう。2018年の立秋は8月7日、その3日後の8月10日の東京の最高気温は34.5度でした。「まだまだ真夏ね……」と思いますが、8月10日付けの手紙では、「残暑の候」と書いてください。そのあとで、「でも残暑なんていえないような暑い日が続いていますね。お元気でいらっしゃいますか。」などと続けるのです。「残暑の候、皆様におかれましてはますますご健勝のことと拝察いたします。でも残暑なんて……」といった感じです。
時候の挨拶のルールをわきまえた上で、相手の方を慮るとことができるとレベルの高いお手紙になります。形式を重んじることが必ずしも大事なことではないかもしれませんが、日本の美しい伝統を学ぶよい機会だと思います。そしてまた、目上の方へのお手紙、彼氏や旦那さんのご家族へのお手紙などに、この時候の挨拶を正しく美しく書くことができると、見直されること間違いなしでしょう。
そして、ここさえクリアしていれば、あとは伸び伸びと思うがままに書いても大丈夫です。それでは12月の時候の挨拶について調べてみましょう。
12月上旬の季語・時候の挨拶
12月上旬は二十四節気では、12月6日頃までが「小雪」に当てはまります。暦の上では11月7日頃から「立冬」、つまり冬となっており、そして2月4日頃の「立春」の前日である「節分」まで冬は続きます。
「小雪」は冬の入口にあることをいい、枯葉が舞い、山には雪が降りはじめるでしょうという頃を指しています。これらを想起させる言葉を時候の挨拶とします。
・初冬の候
・小雪の候
・初雪の候
あるいは、12月は「師走」ということで、
・師走の候
などということもできます。「いよいよ12月」「一年の終わり」「なにかと忙しい毎日になります」ということもふさわしい挨拶となります。
さらに続く文章例
「~の候」にかえて「~のみぎり」と記すこともできます。「候」とはその季節の「気候」「天候」「時候」を示す意味です。「みぎり(砌)」も同じような意味で、「時節」「おり」「頃」ということです。いずれも、初冬の折に、小雪の気候に、師走の時期に、と意味します。
さらに続ける文章としては、
・寒さが日に日に厳しくなっています、
・あちらこちらから初雪の便りが聞かれています、
・師走に入りご多忙な日々が続いていらっしゃるかと、
・カレンダーが最後の一枚になって、
・もう年末の準備に取り掛からなければならないのかと、
などと記すことができますね。一般的な表現としましては、
・初冬の候、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
・師走の候、なにかとあわただしい年の暮れとなりました。
・初雪のみぎり、吐き息の白さにも驚いてしまう今日この頃です。
・寒さつのります中、いよいよ師走を迎えました。お忙しくお過ごしのことと思います。
・早いもので、今年もとうとう最後の月となりました。まだやり残したことが山ほどありますのに。
などが考えられます。
二十四節季を分けた「七十二候」では
そして、二十四節気をさらに細かく分けている、「七十二候(しちじゅうにこう)」というものもありますよ。
たとえば、小雪の12月のところは、12月1日までは「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」、12月2日から6日までが「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」として橘の実が黄色になり始めることを指します。
・北風に枯葉が舞い上がっています、
・橘の実も色づく寒さとなり、
などと記することができます。
12月中旬の季語・時候の挨拶
12月中旬の二十四節気、7日頃から21日頃までが「大雪」に当たります。山地のみならず平地においても雪が降り出す時節ということですね。冬もいよいよ本番に入るといえる時期でしょう。
・大雪の候
・寒気の候
などがふさわしいと思います。
さらに続く文章例
後に続く文章も交えて、一般的な表現としましては、
・霜寒の候、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
・寒冷の候、年末年始のご準備にお忙しくお過ごしのことと存じます。
・師走も半ばを過ぎ、残された日々を数える今日この頃です。
・北風が身にしみる季節となりました、お風邪などひかれていなければと案じております。
・木枯らしが吹きすさぶ頃となりましたが、お変わりございませんでしょうか。
・寒さの中で、ポインセチアの赤と緑に心を和まされます。
・師走の候、クリスマスの準備に気をとられ、年賀状をどうするか何も考えていないことに気づき愕然としております。
などが考えられます。
二十四節季を分けた「七十二候」では
そして七十二候においては、次のように記されています。
7日から11日までが「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」として、天地の気が塞がって冬となるという意味です。
・空が塞がれたような重苦しい季節となり、
などという表現も使えるのですね。
12日から15日までは「熊蟄穴(くまあなにこもる)」、と熊が冬眠に入ることを示しています。
・熊も蛙も冬眠し、そのほかみんな冬篭りを始めました。
16日から冬至の前日までは「鱖魚群(さけのうおむらがる)」として、特に北国の河川にて鮭が産卵のために遡上する光景が見られる時期です。
・北国の川では鮭の群れを見ることができ、
というような面白い表現もできます。
さらにこの時期のものとして、「シクラメン」「洋梨」「鱈」「大根」などがあげられます。
・シクラメンの彩が寒さを和らげてはくれますが、
・鱈の西京焼きが特に味わい深くなる季節となり、
などと、旬のものを時候の挨拶に使うのもいい工夫となります。
12月下旬の季語・時候の挨拶
12月22日頃から翌年1月4日頃までは二十四節気では「冬至」となります。特にその最初の日は、一年で最も夜が長くなる日ですね。気分も暗くなりがちですが、前向きな言葉を記しましょう。
ただ、冬至を越えると日毎に日照時間が長くなり、太陽がその力を取り戻していくことになるのです。「一陽来復」という言葉もあります。間もなく、新年が来る、春を迎える、良いことが起りますよ、ということなのです。
「冬至」には柚子湯に入るという風習もありますね。健康で風邪をひかないように、柚子の香りで邪気を払いますように、という意味のようです。そして本当に年の暮れ、年末を迎えます。
・冬至の候
・柚子湯の季節に、
・歳末の折に、
・年の瀬を迎えました、
・お正月飾りを急がなければという時期になり、
などといった表現がふさわしくなります。
さらに続く文章例
一般的な表現としましては、
・歳晩の候、皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
・歳末の候、今年もいよいよ押し迫ってまいりましたが、お元気でお過ごしのことと思います。
・今年も残すところあとわずかとなりましたが、お変わりございませんでしょうか。
・年の暮れを迎え、一層お忙しくお過ごしのことと思います。
・年末の候、あわただしい日々が続きますがいかがお過ごしでしょうか。
・師走の風の冷たさも忘れてしまうほどの年末の忙しさですが、お変わりございませんか。
などが考えられます。
二十四節季を分けた「七十二候」では
七十二候では、
「乃東生(なつかれくさしょうず)」、夏に枯れるうつぼ草はこの時期に芽を出す、
「麋角解(おおしかのつのおつる)」、ヘラジカはこの時期に古い角を落とし、新しい角を生やす準備をする、
「雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる)」、雪に埋もれながらも、麦はこの時期に新しい芽を出す、
となっています。寒さの中ではありますが、前向きな言葉になっていますね。
・寒さの中でも、うつぼ草は芽をだす頃となりました。
・ヘラジカの頭には新しい力がみなぎってきています。
・積った雪の下では麦が新芽を出していることを思い起こします。
また、
・いよいよ暮れも押迫ってまいりました、
・新年の到来が待ち遠しい今日このごろですが、
・つつがなく年越しができますことを祈りながら、
・大晦日にはどのチャンネルがいいものやらと、
など本当に年末らしい挨拶もできるでしょう。
二十四節気と七十二候
そもそも、二十四節季気(にじゅうしせっき)とはどういうものでしょうか。
江戸時代、日本は太陰太陽暦を使っていました。日々の暦は月の満ち欠けによる、いわゆる太陰暦に基づいていたのです。
しかしその暦では農作業の開始時期を表すことなどにとっては不適切なので、その暦とは別に太陽の動きや高さによる二十四節気というものを定め、それによって田植えの時期や稲刈りの時期を見定めることができたのです。
四季をそれぞれ六等分しています。昼間が一番長くなる「夏至」、一番短くなる「冬至」などは今でもよく知られています。また、昼と夜の長さが等しくなる「春分」や「秋分」は現在では祝日とされていますね。現在の12月にあるものは、「小雪」「大雪」そして「冬至」となります。毎年およそ同じ日付ですが多少の前後があるので気をつけましょう。
七十二候(しちじゅうにこう)はあまりなじみがありませんね。
二十四節気をさらに三等分しその季節の特徴を巧みに表現しているものです。三等分したものはそれぞれ、初候、次候、末候と呼ばれます。元々古く中国で考案され伝えられていたものが、江戸時代に日本風にアレンジされています。
たとえば、2月4日頃から18日頃までの立春の期間は、「東風解凍(こちこおりをとく)」「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」「魚上氷(うおこおりをいずる)」、の三つに別れています。
6月21日頃から7月6日頃の夏至は、「乃東枯(なつかれくさかるる)」「菖蒲華(あやめはなさく)」「半夏生(はんげしょうず)」、となっています。
11月7日頃から21日頃までの立冬は、「山茶始開(つばきはじめてひらく)」「地始凍(ちはじめてこおる)」「金盞香(きんせんかさく)」、と表現されています。
気心知れた人には楽しさをプラスして
ご紹介したように、定型的な季語を含めた時候の挨拶は数多くあります。手紙の内容に、あるいは書き手であるあなたの心にふさわしいものを引用するのがいいですね。
しかし、かなり事務的な内容であったり、少しフォーマルな会合のお知らせ、お礼状、ご挨拶状などという場合は、定型的なものの引用という書き方がふさわしいともいえますが、本当の「私信」のときはどうでしょうか。
あなたの仲の良い友人や家族など気心知れた相手に送る手紙では、だれでもが書くような決まりきった時候の挨拶では少し味気ないような気がします。もっと自由に今の季節のあなたの心を表現し、本当の心の中が相手に届きそして共感してもらえるような、そんなご挨拶が書けるといいですね。
たとえば……
「枯葉も尽き果てて、さらに寂しさを感じる季節になりましたが、クリスマスやお正月ももうすぐということですから楽しいことを想像して毎日を過ごしたいですね。実は何をクリスマスプレゼントにするかこっそり考えています。」
「日暮れが早くなり毎日の帰宅の足を急がせますが、街中ではイルミネーションが増えたりしていて少しうきうきしたりもします。そういえば去年の今頃も寒い寒いといいながらいっしょにイルミネーションを眺めましたよね。」
「寒くなればなるほど、あの灼熱の真夏の日をいっしょに過ごした楽しかった出来事が思い起こされ、廻る季節の不思議なことに驚いてしまいます。」
あなたにしか書けない時候の挨拶を見つけてください。
書きたくなるレターセットを揃えると◎
手紙を書いてみたくなるものをそろえるのもいいかもしれませんね。旅行やデートで訪れた場所場所で、そこでしか買えないレターセットをぜひ買ってみはいかがでしょうか?きっと誰かに直筆の手紙を書きたくなるはずですよ。
例えば、観光名所・鎌倉へデートに行ったとしたら、是非「鎌倉文学館」を訪ねてみるのがおすすめです。
築80年という歴史のあるおしゃれな洋館に、鎌倉にゆかりのある文学者の資料が多数展示されています。その中には、作家の直筆原稿も数多くありますよ。川端康成、三島由紀夫、太宰治そのほか多数あります。さすがと思わせるようなきれいな字だったり、あるいは「え、何て書いてあるの?」という字だったり。
しかし、そういった直筆原稿の温かさに触れる、パソコンやスマホへのタイピングとはちょっとちがうなあということを実感できるでしょう。売店では、瀟洒なレターセットが販売されていますよ。
12月の時候の挨拶について、「お手紙」の周辺知識を交えてお伝えしました。今の時代、手紙を書く機会がなかなかないかもしれませんが、だからこそ手書きの美しい文章は相手に響くものです。
是非参考になさって美しい文章を大切な人へに贈ってみてはいかがでしょうか。